サバイバル焚き火。

2016/02/14 チリ・アウストラル街道南部

 

バレンタインデイ、なんて忌まわしい日だろうか。バレンタインの思い出はそう、それは小学校5年の頃だ。登校してランドセルから教科書を机の中に入れようとしたら何かがつっかかって入らない。中を見ると小さくかわいらしい紙袋が入っている。

 

「こ、これは??!!」

「バレンタインチョコってやつかー!!」

「俺もついにここまで来たか、よく頑張った俺!!」

 

と自分で自分を褒めつつ、まだ教室に誰も来ていない事を首をぐるりと回して確認してそっと中を確かめる。小さな箱と、そして手紙らしい小さな紙片が入っていた。そっと手に取り、どきどきしながら開いてみる。

 

「吉原の事が二番目に好き」

・・・・

「なんじゃそりゃー!!!!」

「しかも誰からやねん、名前書いてねえ!!」

 

小5にしてこんな事誰だか分かんない女子に宣言される、それ以降だ、この忌々しい日を憎むようになったのは。

 

そして2016年、俺は自転車でパタゴニアの大自然の中を自転車で駆け抜けている。ここらは緑も多いが雨も多い。その日も朝から雨。雨具は身につけているけれど、どうしても靴は濡れ、そして仰向きなんでどうしたって首元から浸水して胸元から濡れていってしまう。

晴れれば暖かいが雨はぞっとするほど寒くなる。濡れればなお更だ。

 

2月14日。

 

日本じゃ「これ、チョコレート(ハート♪)」なんつうて彼氏だかなんだかに渡して「お返しに何貰えんのかな、ぐひひ」なんて打算女どもや、「よーし、それじゃ今夜はお返しに俺のホットミルクを(以下略)」なんつうクソ野郎どもが違う汗をかいてるに違いない!!

 

ってのに俺ってばもうサングラスが雨に濡れてんのか涙なのかもう前が見えないほど。んで寒い。。すげえ寒い。

 

そうして雨に打たれながら、泣きながら坂道を下っていると木立の中で焚き火をしている白人の自転車乗りが居た。

 

その手があったか。

 

雨は降り続いてはいたけれどさほど強い雨ではなかったので木立の中はそこまで濡れてはいなかった。自分も手頃な木立を見つけて自転車を入れ、焚き木を集める。

木立の中といってもやはり雨は降り注いでくるので、手持ちのレジャーシート(テントの下に敷く用に持ってた)で木立の中に天幕を作る。防水布ではないけれど雨防ぐ位には十分役割を果たしてくれる。

 

やや濡れているので火付きは悪いものの、ぬれてない小枝や葉っぱを集めてそれでもなんとか火を起こす。

暖かい。。。

衣服の汚れなんて気にせずドカッと地面に座り、靴と靴下を脱ぎ、濡れたシャツと共に焚き火に当てる。すぐにゆらゆらと水蒸気があがり見る見る間に乾いていく。

 

食料は十分に持っていたのだけれど、調理用の燃料(ガソリン)は確実に補給出来る町まであと4日はかかる。そして燃料の残り4日分だ。雨や膝痛で順調に行けないかもしれない。

 

目の前に焚き火がある。

 

これ、調理に使おう。

手頃な石を集めてカマドを作り、鍋を置く。

 

火加減の調整は簡単ではなかったけれどもそれでもご飯炊いて炒めもの作って即席スープのお湯まで用意できた。

焚き火で暖を取って、そして料理までして、なんだか吹っ切れた気がした。

今まで調理用燃料なかったら料理なんて出来ないと思ってた。だから僻地においてはガソリンスタンドの間隔が俺の旅を左右するって程だった。いや、なんつうか、無頼な野宿野郎を気取ってはいても結局大切な全てを「町」に頼っていたのだった。

 

これが砂漠とか焚き木が集められない場所だったりするとそりゃ話は別だけど、こんなにいくらでも焚き火が出来る環境においては燃料は「町」に頼らなくっていいんやん。

 

・・あれ?なんだか自分でも書いてておかしな方向に。バレンタイデークソ食らえって事で書き始めたのに、「俺少し解き放たれた感じする」って事になっちまった。

まあいいや。とにかく日本で幸せ男女どもが甘いお菓子と甘い一日を過ごす中、俺は雨に打たれて焚き火で暖取って焚き火で飯炊いて原始的に過ごしてたって事だ。

 

幸せ男女ども、みんな虫歯になってしまえ!!

 

さて、2月18日現在、全長1000kmアウストラル街道第二の中継地点となるコクランという町に到着しました。9日間連続未舗装路走行(つうかアップダウン多すぎて半分は歩いて押してる)でヘットヘト。ちょうど明日から4日間は天気悪い予報なんで、ここでロング休憩です。

 

んではまた!!

 

こんな日にはもう飲むしかねえな。

アウトドアにおいてシートとロープの重要性がよく分かった。汎用性めっちゃある。

ちゃんとしたストーブしか使った事ないから焚き火で調理が出来るってのがなんだか不思議だけれど、焚き火から調理の歴史が始まったんだよな。

この後靴下を焚き火に近寄せすぎて漕げて穴あいた。

この小鳥は野宿してるとよく来る。好奇心旺盛らしくってテントの中にまで入ってくるカワイイ奴。餌もらえるから来る訳ではないみたい。テントの中覗いたり、靴つついたり、自転車に乗ったりしてる。

 

←前の記事「ブレーキぶっ壊れた(二回目)」

             「ここはバイクで来るところやな」→次の記事


概要 | プライバシーポリシー | サイトマップ
たぶん日本人初、リカンベント自転車による世界一周を綴るホームページ。