最終章 扉を叩く時

僕の今回の旅は終わった。

バンコク到着の時。
バンコク到着の時。

自転車こその何かあった?と聞かれるけれど、特別自転車だったからこんな出来事が、というのは多くは無い。パンクすらしなかったし道中自転車旅人とも出会わなかった。

タイではこうした標識が多く助かる。
タイではこうした標識が多く助かる。

ただ朝早く起きて、次の町目指してひたすらペダルを漕ぐ。乗ってる時はただそれだけと言ってもいい。たまに冷たいジュースや軽食で小休止する以外はずっと走り続ける。漕いでる時は何も難しい事は考えない。僕の力の出し方にもあったのだけれど、自転車にしては遅くない時速30キロ位で走っていて、力の殆ど全 てが運動にいっていたので思索まで及ばなかった。

ようやく、バンコクまであと600km
ようやく、バンコクまであと600km

酷熱の中自虐的までに自分を追い込んで、汗が噴きだして、そしてただかげろうの先を見つめて。



何も考えずただ次の町という目標のために全力を尽くす、これこそが自転車旅だった、といえるのかもしれない。日本では何も考えず一つの事だけに汗をかくという事はあまりない。少なくとも僕はなかった。誰と競うでもなく、カネを稼ぐ為でもなく。

天国の扉をたたくとき、カネも、モノも、社会的地位も、そんなのは何も持ってけない。持ってけるのは思い出だけだ。

ゴールとなったバンコク・ホアランポーン駅
ゴールとなったバンコク・ホアランポーン駅

語るべきものを何も持たずに天国へ行くなんてゴメンだ。次はどこでそれを得ようか。天国の扉を叩くまで、旅は明日からも続くのだ。

 

                         <<終>>


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