わー!キャー!!
その歓声は日本の遊園地のそれと同じではある。
ちょっとスリルのある乗り物、そういうのにはつき物だ。
だが日本ではいくらスリルがあるといっても完全に安全が担保されているからこそ
それを楽しめるのだ。本当に危険ならばそれは狂人の乗り物だ。
しかし国が違うとその認識も変わるのだろうか。
「観覧車」
これを絶叫マシンと呼ぶ人は少なくとも日本人では居ないはずだ。そのほとんどがゆったりと回り、高いところからの景色を楽しむためにある。場合によっては恋人たちのための空間たる事もあるだろう。
たまたま立ち寄ったこの町では、今日から数日間フェスティバルであった。一部が歩行者天国になっており、町を覆い尽くすかのような数々の幟や旗、大きな人形や鼓笛隊のパレード、行き交う人々の笑顔からいってそれはみんなが待ちに待ったものだろうと感じさせる。
その一角でいわゆる移動遊園地があった。その目玉が観覧車だ。
さすがに移動式だけあって高さは3階建ての建物位で大きくはない。
だがその作りを見ると、安全が全てに優先する日本に生まれた僕からするとこれこそ本当の絶叫マシンなのではないかと思ってしまった。
ペンキにペンキを塗り重ねてもなお錆びを隠せない古びたボディ。そして動力はなんと
トラックのエンジンだった。「キュルルル」とセルモーターでエンジンをかけ、左足でクラッチを切り、
素早くシフトレバーを1速に叩き込む。左足の力を少しづつ抜き、クラッチをつなぐ。すると少しづつ目の前の巨大な輪がゆっくりと回りだすのだ。
そして回転が早まってくると2速、3速、とシフトをあげていく。それに伴い観覧車の回転も上がっていき、乗客の歓声も絶叫に変わっていく・・・。
フィリピン・ルソン島ソルソゴンのフェスティバルの一シーンであった。