バラナシにはスーパーマーケットが無い。
それが今までの常識であった。大量消費社会の申し子である日本人旅行者にとって、スーパーの無いバラナシはまさに鬼門。町にあるのはキヨスク程度の売店であり、しかもそこの並ぶ商品はどこを見ても同じものばかり。
「諦め」
その観念こそがここでは必要であり、スーパーなど求める方が間違いのバラナシであった。
しかし僕は諦めなかった。諦められなかった。
買い物カゴを持って店内を闊歩したい。思う存分買い物カゴに商品を放り込んでいきたい。その欲望は膨らむこそあれ決して萎む事はなかった。しかしバラナシの人々に
「スーパーマーケットは無いのか?」
と聞いても、そもそもスーパーマーケットという形態自体を知らないのか一向に要領を得ない。正直言って一時は諦めかけた。だが、いつものキヨスク型商店で紅茶のティーパックが無いかを聞いてみるとたまたま買い物に来ていた知的なインド人が言ったこの一言がバラナシの旅行者史を変えたのだった。
「それならスペンサーズに行けばたぶん置いてるよ IPVIJAYAモールの近くだ。」
彼に礼を言い、狭い路地を駆け抜け、通りかかるリキシャに飛び乗る。
「IPVIJAYAモールへ行ってくれ!!」
モールの周りは小奇麗なホテルや商店が並び、明らかにハイクラスな人たちが集う区画。僕の嗅覚は確実に
「ここにある」
と言っている。
嗅覚を頼りに100mほど歩くと
あった。やや看板はくすんでいるが間違いなくスペンサーズ。ガラスの扉越しに見えるスーパー特有の棚。
逸る気持ちを抑えながら、警備員がうやうやしく開ける扉をくぐる。
そこはまさにスーパーであった。
さすがに日本の調味料こそは置いてはいないが中国醤油は置いていた。
「具材にコレを加えるだけで簡単インド料理」的な出来合いのスパイス調味料もよりどりみどり。
コレは一箱38ルピー(80円位)なんでインド土産としてもいいかも。
インドでは珍しい冷凍食品も。冷凍食品が買えるのは本当のお金持ちだけ。停電の多いインドでは冷凍庫を持っているだけでは冷凍食品は買えない。停電でも冷凍庫を稼動出来る大型発電機を備えた邸宅に住む人だけが買えるのだ。
チーズやバターも置いてる。
シャンプーや石鹸、その他生活雑貨も置いてる。野菜も置いてるが、それはそこらへんの市場で買った方が新鮮で安いのは他のアジア諸国と共通である。
米も各種売っていて、安いインディカ米(長粒米)の他、ジャポニカ米らしき米(短粒米)もあった。インディカ米がキロ38ルピー程度に対し、ジャポニカ米は68ルピーとかなり高い。
大雑把だが地図を載せておく。地球の歩き方にも載ってる「イーバカフェ」から歩いて5分ほど。
ゴードリア交差点からリキシャで片道40~50ルピー程度で行ける。
タイのスーパーみたいに何でも揃う、という程の品揃えではなくあくまで「インドの地方都市のスーパー」なので過剰な期待をしていくとがっかりするかもしれないが、たとえばクノールのカップスープコーン味なんかはカレーに疲れた貴方の胃を癒してくれるのは間違いない。
バラナシを訪れる際にはぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。