わざわざ山越えしてまでカトマンズまで来たのは日本から送ってもらったモノを受け取りたかったというのもあります。
インドに送ってもらう事ももちろん可能なのですが送ってもらったモノが届くまで何日かかるか分からないというのにひたすら待つにはやっぱり快適なトコの方が良いのは言うまでもありません。
国際郵便物はやっぱり首都が一番早く届く訳ですが、インドのデリーとネパールのカトマンズ、長く滞在するなら絶対カトマンズです。安く快適な宿、どんな食欲をも満たしてくれる膨大な数の各国料理レストラン、先進国的スタイルのスーパーなど快適に生活出来る要件を全てそろえているのがこの街です。デリーはその対極。各国の大使館があるのでビザ取得やなんやでデリーを訪れる外国人ツーリストは多いのですが「デリーが好き」なんて人には今まで会った事が無い位我慢を強いられるところ。僕も何度か訪れた事がありますが、控えめにいって好きではありません。いや、「大嫌いな街」です。
とはいえもうカトマンズを訪れるのもこれで5回目。快適とはいえ長く滞在するには僕の好奇心は磨り減っています。カトマンズに到着の4-5日前に「そろそろ発送して」と連絡しておきましたら到着日の翌日には届きました。
ここで言う「届きました」とはピンポンと鳴らして配達員が届けてくれるという意味ではありません。
ネパールは郵便システムがほとんど整備されておらず直接届けてくれるのはカトマンズ市内のみ。それも手紙だけのようです。
それ以外の小包は全部局留め。自分で郵便局に訪ねていかねばなりません。ネットで荷物がカトマンズ中央郵便局に着いたのが確認出来たので到着翌日には取りに行ってきました。
とても一国の首都中央郵便局とは思えない薄汚れた建物を見た時点から予想出来たとはいえ、やっぱり入ると真っ暗でした。電灯がついていません。というのもネパールでは電力不足から首都カトマンズまでも常時計画停電を実施しており1日の内半分も電気が使えない状況下にあります。
いくらインターネットで通信の主役を奪われつつあるとはいえ現物を運ぶ郵便とは今でも国の経済にとって血管ともいうべき重要な役割である事に代わりはないはずです。
そんな中央郵便局にすら電力を配せないこの国に物悲しさすら覚えながら係員らしき人に
「日本からの国際小包を受け取りたい」
と伝えます。係員らしき、とはこの国の郵便局には制服というものが存在しないので誰が係員なのかが分からないからです。
すると彼は僕の名前を確認し、
「こっちだ」
と首をクイっと捻り次の部屋へと連れていってくれます。当然その部屋も電灯がついてるはずもなく小さな明り取りの窓から差し込む光だけが唯一の光源。目を慣らすとそこにはまるでゴミ捨て場のように乱雑に積み上げられたダンボールの山。
どうやらその山の中から探す事から始まるみたいです。その山の中にどういう秩序があるのかは判然としませんでしたが僕が途方にくれて目の前のダンボールを何個か手にとって差し込む光にかざして宛名を確認してるものの数分のウチに彼は一つを手に取り
「これか?」
と差し出してきました。それはまさに僕宛の荷物、この暗い中、山の中からほぼ一発で探し当てた彼。思わず
「プロフェッショナルだ」
と言ってしまう僕でした。
並の国ならそこでパスポートで本人確認して、ハイどうぞ、で済むのですがここは後発発展途上国のネパール。物事がそんなに簡単にスムーズに行く訳はありません。そんなにスムーズに行くなら既に経済発展を遂げているはずです。
まずそこで何やらこっちの言葉で書いてある用紙を貰い、隣室の「税関」と書かれた部屋へ移動。そこでまたその用紙に名前とサインを書き、再び小包カウンターに戻ります。
そして荷物を開封し、中の荷物を全部係官にチェックしてもらいます。その品目を係官が用紙に記入し、三度税関室へ。そこで税務官が課税金額を計算、納税します。納税証明書を持ってまた小包カウンターへ行きようやく荷物を受け取る事が出来ました。
日本でなら物流のスムーズさを優先してか一定金額以下(確か1万6000円位)であれば課税されませんが、ここではどんな些細なものでも全部開封して課税する仕組み。それがどういうモノが課税されて税率がどうなのか、係官も「課税品目帳」みたいなのを見ながら計算していたのでちゃんとした決まりがあるのでしょうが
僕にはまったく分からない。
それでもこうした「日本との違い」を感じるのも旅の目的の一つ。
「税金払って僕もこの国に少しは貢献できたな」
なんてちょっとした満足を覚えながら、荷物を持って宿に帰る足の運びも軽やかになった僕でした。
ちなみに箱の中身のメインはこの二つ。
一つはサポートしてもらっているパナソニックさんからの新品タイヤ。
「既に5000km走ったしカトマンズに着く頃にはかなり磨り減っているだろう」
と見込んで手配してもらったのですが意外にもまだまだあと数千キロは使える状態。いくらなんでもここで交換するにはもったいない。新品タイヤはしばらく積んで走る事に。
そしてもう一つのメインが
ソーラー充電器。
東南アジアでは毎日宿に泊まれていて地図として使っているスマホの充電には事欠きませんでした。GPSで現在地もすぐに分かるスマホは現代文明に冒された自転車旅人にとっては切り離せない最も重要な電子アイテム。特に方向音痴な僕にとってはコレが命綱といっても過言ではありません。
今後行くべき中央アジアでは町と町との間隔が広くなりとても毎日コンセントにありつける事は期待出来ません。携帯型の外部電池も、そしてノートPCからもスマホへ充電出来るのですがそれらも結局はコンセントに依存するもの。
人家のまったく無い荒野を独力で進む自転車旅行者には、コンセントに頼らない自前の電源が必要となります。
それを叶えてくれるのがソーラーです。これがあれば太陽がある限り自前の電力を確保出来ます。
「サバイバルっぽい事言ってるけど電気やスマホに頼るってどうなの?」
という声が聞こえないでもありませんが、今やエベレスト登る人でも南極行く人でも電子機器持たない人は皆無。より安全に確実に生き残るには今存在するアイテムは使いこなす能力こそがサバイバル能力なのです。
ちなみにこのソーラー、単三2本を充電出来て、その充電された電池をUSBで外部出力が出来てそれをスマホに繋げば充電可能!
というはずだったのですが、単三2本の充電に14時間かかります。な、長い。。
さらに充電する単三ニッケル水素充電池(エネループ)2本の電圧は合計2.4V。いくら昇圧回路があるとはいえUSB出力である5Vには上がらないようで直接スマホにつないでも充電されませんでした。
解決策としては一旦ソニーのポータブル電源(スマホとかによく使われるヤツ)に充電して、その充電池でスマホを充電するという迂回が必要。電力的にはすごいロス。
そもそもこんな小さなソーラーパネルでスマホ運用しようというのが間違いといえば間違いなのですが、
今の所、
・小さく軽い(大きいと発電能力も高いが大きい程常時走行中に使うのは難しくなる)
・経済性(比較的安い。本体とオプションのUSB出力装置のセットで6000円位)
・信頼性(小型太陽光発電で実績のある日本メーカー・太陽工房製)
・堅牢性(他のソーラー充電器は折畳んだパネルを広げる作りであったりで屋外長期の運用には不安)
これらのバランスを兼ね備えたのはコレが一番。
コレだけで完全無欠にスマホを運用出来るという訳にはいきませんでしたが、それでも人家のまったくない荒野で
充電出来ない・・・自分の正確な現在地が分からない
のと
少しは充電出来る・・現在地確認出来る
というのとでは生死を分ける程の違いが生まれてきます。
ってまあ偉そうに大げさに言いましたけど、地図と方位磁石と自転車のメーターで走行距離確認すれば本当のサバイバル能力ある人なら現在地なんてすぐ分かるんですけどね。(一応スマホ使えなくなる状況を考慮して磁石とその土地の地図は常に用意してます)
何せ僕、方向音痴ですしね。
「ここどこだろう」
なんて心配しながら走るよりボタン一つで現在地分かる方が安心して走れてその分風景も楽しめるってもんです。
まあ要するにカーナビ付でドライブするのと同じですね。
なんだかんだ言って便利グッズに頼る僕ですがまあそこんとこは温かく見守ってやって下さい。
それではまた。